第50回日本コミュニケーション障害学会学術講演会の開催にあたって
第50回日本コミュニケーション障害学会学術講演会
会長 虫明千恵子
このたび、第50回日本コミュニケーション障害学会学術講演会を東京で開催させていいただくことになりました。2024年、本学会の学術講演会は設立50周年という節目の年を迎えます。
先日、東京・国分寺の学会事務所を訪ね、学会発足当時の資料を見せていただきました。本学会は1975(昭和50)年11月1日、東京において「第一回 日本聴能言語士協会研究発表会」として産声を上げました。演題発表はわずか3題ですが、発表後の活発な討論の様子が克明に記されていました。
今大会のテーマは「過去にまなび、未来へつなぐ」といたしました。熱い思いをもち、たゆまず歩んで来られた先達の足跡に触れ、レガシーを若い世代につないでいく機会にしたいと考えております。
今日、法制度の整備やテクノロジーの進歩により、コミュニケーションに障害を抱える方を取り巻く環境の利便性や有益性の向上には、目を見張るものがあります。しかし、いつの時代も人が発することばやメッセージを受けとるのは、人であることに変わりはありません。受け手はそのことばやメッセージから何か別の思いや考えを紡ぎ出し、その人らしいことばになるよう手助けする役目を担っています。コミュニケーション障害領域が多様化する今、私たちには受け手としてのあり方が問われているように思います。
50周年を記念し、養老孟司先生にご講演をお願いいたしました。世代を超えて人が人とわかり合い、共存するということはどういうことかを説いていただきます。
山田美智子先生には、重い障害を持たれたお子さんをご家族とともに看取った幾多のご経験をもとに、「豊かに生き果たすこと」と題してお話しいただきます。
なお教育講演については、4題を予定しています。西村ユミ先生(看護)には現象学的視点からみたコミュニケーションについて、山口加代子先生(心理)には高次脳機能障害のある方の心理について、成人期発症例だけでなく小児期発症例についても触れてご講演いただきます。さらに榎勢道彦先生(理学療法)にはICFに基づく「F-words」という概念を活かし、新たな子どもの障害と支援の考え方について、中井昭夫先生(小児科医)には「身体性」と環境との相互作用を踏まえた神経発達症の理解と支援について、それぞれご講演いただきます。さらに、明日からの臨床実践に役立つ内容を盛り込んだセミナー、シンポジウムを企画中です。
それでは風薫る初夏の東京で、準備委員一同、皆さまのご参加を心よりお待ちしております。